水冷と空冷
ポルシェのスポーツカー911。その歴史は1964年から始まり、現行モデル992型はすでに8代目を迎えています。
そんな歴史の長い911を大きく分けるとすれば、水冷時代と空冷時代です。
4代目993型を空冷モデルの最後とし、5代目996型から水冷モデルへと移行しました。
どちらにも魅力があり、どの年代も人気のある911シリーズですが、
今回は水冷・空冷で、どんな違いがあるか、メリットやデメリットについて、ご紹介していきたいと思います。
エンジンが内燃機関である以上、熱との戦いは避けられません。エンジンが正常に作動するためには、冷却能力が重要。
水冷式は、エンジン内に設けられたウォータージャケット(通り道)に水を循環させることで冷却する方式です。循環する冷却水の通り道は、サーモスタットと呼ばれる機構によってコントロールされており、安定した冷却が可能です。
この冷却能力が高い点が、水冷式のメリット。そのため部品の熱膨張も少なく、部品間の隙間(クリアランス)が狭くて済みます。またウォータージャケットを通る水は壁にもなるため、メカニカルノイズを抑えることができ、結果的に静かなエンジンになります。
現行ポルシェのような高出力エンジンでは排熱の量も多いため、冷却能力の高さはより重要な要素となります。
一方水冷式のデメリットは、構造が複雑になるため、部品点数と重量が増えることです。
必然的に冷却水の定期的な交換や、ラジエーター、パッキン、パイプの破損、消耗による冷却水漏れのチェックなど、メンテナンスが重要です。
空冷式は、外気の風をエンジンに当てて冷却する方式です。
そのため空冷式エンジンには、シリンダーの周囲に表面積を増やすためのフィンが取り付けられているのが特徴。
空冷式のメリットは、構造がシンプルなのでコストがかからないこと、メンテナンスが簡単であることが挙げられます。
しかし空冷式は風を当てて冷却するため、気温や使用環境によっては十分な冷却や温度管理ができず、不安定な面もあります。
より冷却性能を高めようとすると冷却フィンや送風ファンを大きくしなければならず、エンジンそのものが大きくなってしまいます。
また水冷式のような水の壁もないためメカニカルノイズも多く、エンジン本体からの音が大きく聞こえ、一般的にはデメリットの多い方式とされています。
4代目911
911の4代目993型では3.6L 空冷式水平対向6気筒エンジンが搭載されていました。
このエンジンは、鈍い金属音と乾いた排気音、空冷ファンのノイズなどのハーモニーが独特の音を奏で、メカ好きには堪らないサウンドで多くのファンがこのサウンドの虜となりました。
その993型は1998年まで生産されましたが、年々厳しくなる排ガス規制への対応で安定した冷却性能が必要とされるようになり、ポルシェ伝統の空冷式エンジンがここで途絶えることになりました。
そのため「最後の空冷」と呼ばれる993型はいまだにファンも多く、年々希少価値も高くなっています。
以上、今回は水冷と空冷の違いをご紹介しました。
どちらにも良さがあるので、年代ごとのサウンドを聴き比べても面白いですね。
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